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木色人形・米田さん

木色人形作家・米田さんの画像

◆米田道明
昭和22年兵庫県香住町(現香美町香住区)生まれ。
学習院大学自然科学研究科修士課程修了後、興和株式会社にて医療事業部の研究者として従事。
在職中、電気通信大学にて電子物性工学専攻、博士課程修了、理学博士。
研究者として仕事一筋の日々から、退職後子供の頃当たり前のように触れていた「木」を思いだし、新たな表現の世界へ。
木の色をそのままいかした「木色(きいろ)画」「木色人形」作家として、日々新しい作品を生み出している。

写真の方が、東京・神楽坂の木色(きいろ)人形作家・米田さんです。

今回は、木色人形のことや作るようになったきっかけなどについて、たっぷりとお話をお伺いしてきましたので、ぜひご覧ください。
インタビュアーは、日本の手仕事や職人さんが大好きな石井さんです。


木色(きいろ)人形とは?

石井

こんにちは、よろしくお願いいたします。
米田さんは、「木色人形」をお作りなっているとのこと。
初めて聞く言葉なのでわくわくしています。

米田

木色人形という名前は、僕がつけた名前なんです。
木の人形というと、木を削り出し形を作ってから染料で色を付けるのが一般的ですが、木色人形は自然の木の色をそのまま生かして作った人形ですので、そう呼ぶことにしたんです。

木色人形の画像

石井

人形たちを拝見すると、お顔や体などすべて色が違いますが、これはすべて染料などでの着色ではなく、自然のままの木の色なんですね。
作り始めたきっかけを教えていただけますか?

米田

最初作り始めたのは、「木色画(きいろが)」なんです。

石井

木色画ですか?
ということは、木の自然の色を使った絵ということですね。

米田

そうです。
螺鈿(らでん)や象嵌(ぞうがん)といった工芸品がありますが、その手法を参考に、木の色を生かしたものを作りたいとチャレンジしました。
そこでたどりついたのが木粉(もくふん)を使うことです。

石井

木粉とは木の粉のこと?

米田

勝手に呼んでるんですけど(笑)
木を切ったり削ったりすると、おが屑ができますね。
それを丁寧にふるいにかけ、粉末状にしたもののことです。
一つひとつの木毎に作ります。
木色画は、キャンバスになる板状の木に、色を付けたいところを0.5~0.7mm程度掘って溝を作り、そこにそれぞれの色の木の粉を埋め込み、ニスをかけて仕上げます。
絵の具で描くところを自然の色の木の粉で描いているということです。

石井

螺鈿や象嵌というと、薄く切った貝などをモチーフに合わせて切った素材の片を貼るのですが、米田さんは木粉にして使われている。
新しいですね。

木色人形

米田

自分は化学者なもんだから、ずっと医薬品の研究開発に関わって薬の粉を扱ってました。
だから、粉には慣れてるんです(笑)
木の粉を見ていたら、絵になるなと思ったのが始まりです。

石井

退職後に始められたそうですが、なぜ「木」だったんでしょう?

米田

子供の頃、御飯を炊くのもお風呂もすべて薪(まき)でした。
火を使う燃料が木なんです。
親父と製材所に行き、一山幾らという代金だから、荷車いっぱい積むだけ積んで家族で運ぶ。
その木は大きさや長さが全部バラバラで、使いやすいように切ったり割ったりするのが子供の頃の仕事だったんです。
だから鋸や工具の扱いは自然に覚えていった。
自分のおもちゃや本立てとかも作りましたね。

石井

木を扱うことは生活の一部、当たり前のことだったんですね。
その後、学生時代やお勤めの頃も、木には触れられていたんですか?

米田

それが全く無いんです。
会社員の頃は仕事一筋でした。
薬の研究が面白いので、趣味みたいにやってましたから。
退職近くなって、なにかできるものが無いかなと考えていたら子供の頃の木を切ったりしたことを思い出したんです。

石井

50年間まったく触れていなかったものなのに思い出された。
子供の頃の記憶というのは不思議ですね。

米田

例えば、杉の場合、丸太を切っていくと最初に茶色、そして辺材(木の外側)が白っぽいのに、なぜか芯材(木の中心)は赤っぽい色。
木の種類や部分によって色が違うんです。
切った時に溜まったおが屑がきれいな模様に見えて、これを組み合わせると何かできるんじゃないかと、子供の頃に思ったことがありました。

木色人形

石井

普通の人なら、見落とすところですね。

米田

小さい頃、姉が切り絵や貼り絵を作っていたのも思い出したんです。

石井

子供の頃の記憶から木と再会され、そこから研究者の経験が重なり合い、新しい表現である木色に発展していったんですね。

米田

自分の世界ですから、オリジナリティのあるものが面白い。
研究者根性というのかな(笑)
研究というのは、人の真似では成り立たない。
自分で考えてやった新規なものでなければならない。
あまり人に習ってやるというよりは、自分でいろいろ考えてああできそうだとやるのが面白い、その方が合っているんです。

石井

ありそうで無かった、木色という表現は米田さんの探求心から生まれた。
誰も思い付かなかった、米田さんのオリジナルですね。

立体の方が面白い

石井

人形を作ってみようと思ったのは?

米田

絵を作っていたら、いろんな色の木が集まってきました。
木のブロックを埋め込んで作る工芸も知っていたので、これで人形も作ってみようかと思ったんです。

石井

人形は立体的、3Dですから、技術もより高度で難しくなりますが。

米田

やってみると、立体の方が面白いんです。
木色画を作り始めて、1年半くらいでしょうか。

石井

最初に作られた人形は何ですか?

米田

お地蔵さんです。

木色人形

石井

なぜお地蔵さんだったんでしょう?

米田

お地蔵さんって可愛いじゃないですか。
子供の頃、田舎のいろんなところに居て、なじみのあるものですし。

石井

拝見すると、人形の部位毎に木の種類が違いますね。
笠、お顔、前掛けと体・・・
4種類の木ですか?

米田

手は顔と同じ木を埋め込んで、目はコクタンの黒、口はカリンの赤系の木、杖はブナだから、7種類ですね。

石井

え?
目と口も木なんですか?
描いていると思っていました。

米田

描いたら自分としては価値が無い。
すべて木で作るというのが大事。
木でしかやらないんです。

石井

こだわられていますね。
それにしても、それぞれ木の色や質感がきれいです。
削る機械などは、どうされているんですか?

米田

職人さんだとろくろや木工旋盤などを使われている方が多いと思いますが、僕の場合は、ドリルやフライス盤という機械を自分用にアレンジして使っています。
大学時代にそういった工作機械も扱って必要な実験道具などを作ったこともありましたから、馴染みのあった機械を利用したということです。
切り方もオリジナルだと思います。

石井

でも、それぞれの木をバラバラに削って組み合わせるってとても大変なことですよね?

米田

いえ、最初にこうやって木を重ねて、貼り合わせているんです。
これを回転させて削っていくと、お地蔵さんになっていく。

木色人形

石井

ちょっと待ってください。
笠の木、お顔の木、前掛けなど、それぞれの木片をまず選び、大きさ厚みを考え貼り合わせるんですね?
となると、設計図がないとできないですよね。

米田

一応、図面は描いています。
図面をもとに全体を削りだしてから、手や耳、口や目も埋め込み、持たせる道具も手作りでしつらえます。

石井

おひな様の横にあるぼんぼりなどは?

米田

木を6等分にし、間に違う色の木を貼り合わせて削ります。
真っすぐ切ると金太郎飴みたいになるわけです。

石井

すごい発想です。
最初から出来上がりは想像できた?

米田

こうやればできるかなと思いました。
木の色にこだわりたかったんです。

石井

最初に、いろんなお地蔵さんを作られて・・・。
お地蔵さんの他には、どんなものがありますか?

米田

季節感のあるもの。
おひな様に五月人形などの行事が多いですね。

石井

人形たちはどれも、お顔の色や着物の柄とか、それぞれ木の個性が生かされています。
でも、色だけではないですね。
この人形は、着物の襟の部分が翻っているし、首の後ろ側は少し被さっていて、前は首の木肌が見えていますね。
すごい!
単純に真っ直ぐに木を貼り合わせるだけでは、できないと思うのですが。

木色人形

米田

最初は真っ直ぐに組み合わせるだけだったのが、だんだん斜めに貼り合わせたり、芯をずらせて埋め込んだり、どんどん凝ってみたくなるんです。

石井

木の色だけでなく、どう組み合わせるかまで考えることで表現は広がっていくんですね。

米田

世の中にすでにあるものじゃないから、自分のイメージで設計図を描いて。
要するに実験計画書を書いて、やってみてイメージ通りにできたらヤッターですし、失敗したらもう一度考え直して、ですし。
それが楽しいんです。

石井

ふっと思い付いて完成されるまでに、どのくらいかかりますか?

米田

何ヶ月も頭の中で温める時もありますし、設計図を作るまでも結構かかります。
設計図ができても、木を貼り合わせるだけで上手くいかないと1日かかることも。
完成までに、ひと月かかることもあります。
自分の世界を創ってみたい一心ですね。

石井

そうやって思い描いたものが、実際に形になっていくというのは嬉しいですよね。
最近お作りになった中で、印象に残っている人形はありますか?

米田

最近だと、菩薩(ぼさつ)ですね。

木色人形

石井

とてもスタイルがよく、菩薩の女性らしいラインが出ています。

米田

台座が蓮の花のイメージですが、あえて1枚の花びらで表現しました。

石井

体の前の、服の模様がすごいですね?
これもすべて木のブロックを貼り合わせて、削られているんですか?

米田

このイメージは、円と線なんです。
円は立体にすると球だし、線は面ですから。

石井

上半身と下半身の木の色も違いますよね?
でも模様は続いている・・・。

米田

円は真ん中を引っ張れば円すいになります。
斜めに切れば楕円形で。

石井

いやぁ、すごい!
ネックレスやバングルのようなものも木ですよね
何種類くらいの木をお使いですか?

米田

8種類くらいかな。
首飾りなどは、木を後で埋め込んでいます。
手に持っているものも、別に作っています。

石井

こだわりと繊細さに感動します。
お地蔵さんや菩薩という日本ならではのものはもちろんですが、合唱団のようなものもありますね。

木色人形

米田

実は合唱団に所属していて、その演奏会のプログラムやチラシを任されたんです。
絵は描けないし、木色人形に助けて貰おうと作ったんです。

石井

プログラムやチラシに使うためだけにですか?

米田

そうです。
オルガン伴奏もあるということなので、オルガンも作りました。

石井

作られたオルガンはまさしくパイプオルガンで、鍵盤も2段あって黒鍵もありますが、パンフレットには写っていないですね。

木色人形

米田

そうなんですけど、鍵盤は2段にしてオルガンを表現しています。

石井

木色人形、表現は無限大ですね。
それも米田さんの研究者としてのこだわりだからこそですね。

子供のように感じています。

石井

いろんな人形を拝見しましたが、どれも何か優しく見つめてくれているような、温かさみたいな存在感を感じます。

米田

最初、お地蔵さんを何体か作っていく内に不思議な感覚が生まれてきました。
慈しむというのか、思いが宿っていくような感じです。
一つひとつの人形にも人格が生まれていくような。

石井

人形の個性というものでしょうか?

米田

作り始めた頃は失敗することも多くて。
失敗したものを部分的に使う事もできるんですが、かわいそうになって結局できないんです。
まず削っていく課程で、人形の尊厳のようなものが生まれ、感謝の気持ちが湧いてきます。
お地蔵さんを作っていたからそうなのかなとも思いましたが、お地蔵さんだけでなくすべての人形に感じるようになりました。
最後に目をはめ込むんですが、失敗したら、やり直そうと思っても直せない。

木色人形

石井

目を入れるのは、人形にとって命を吹き込む一番大切なことだと聞いたことがあります。

米田

よくお堂の改修をしたりするときに仏さまの魂をお移しするというような言葉を聞くことがありますが、以前は何故そんなことをするのか解らないでいました。
自分が人形作りをするようになって、「あっ、人形に魂がある」と突然感じました。
不思議な感じでした。
仏さまの魂をお移しするということが理解できたように思いました。
目を入れる、開眼法要などはそんな感覚ではないかなと感じました。
目を入れる時が一番気持ちが入りますから、気分がのらないと目は入れないようにしているんです。

石井

米田さんの作品が完成する瞬間ですね。

米田

作っていく課程で少しずつ心が宿り、目を入れる時に魂がこめられていくような、そんな感じです。
きちんと作っていかないと自分の作りたいものを作る意味がないと、より思うようになってきています。
作品といいますが、すべて子供のように感じています。

石井

これからはどんな「子供たち」を作られていきますか?

米田

合唱団が好評だったので、バンドも作ってみたい。
仏像も、帝釈天のような複雑なものもやってみたいと思っています。

石井

それは楽しみですね。
本日は本当にありがとうございました!

木色人形

米田さんの創作意欲は高く、キラキラとした眼で、でも研究者らしく静かにしっかりと語られていたのが、とても印象的でした。
陽が差す明るいアトリエもすべて手作り。
貼り付けられた木のブロックはもちろん、これまた手作りの工具もたくさんありました。
そして、大事そうに引き出しをあけると、そこには色とりどりの木が・・・。
きれいなピンクアイボリーに黒檀、ヒバやケヤキ、カリンはもちろんのこと、縞模様などまであって。
米田さん曰く「これが鬼のパンツになったりね」と本当に楽しそうでした。
色を表現するものに絵の具やいろんなものがあります。
その昔、美しい石を粉にして使用していました。
有名な真珠の首飾りの青色はラピスラズリの色、日本画にも使われていました。
米田さんが着目した木粉というのはそれに通じるところもあり、そこにとどまらず人形へと進化されています。
今回取材させていただき、作家と研究者は似ているなと思いました。
どちらも、自分の世界を探求しオリジナルを生み出していく。
米田さんは、薬から木という素材をかえ、新たな創造の世界に向かっていく。
木色研究者ならぬ、木色作家として新らしい人生を踏み出されているように思いました。

取材日:2013年11月21日
取材場所:東京都新宿区


いかがでしたか?

東京にお住いの方だと、「こういう人形、どこかで見たことが・・・」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
実は、米田さんの木色人形は、「東京のお伊勢さん」東京大神宮のインフォメーションカウンターにも飾ってあるんですよ。

なお、米田さんの木色人形は、12月18日から手しごと本舗(楽天市場)で、ご購入いただけます。

(2013/12/9 編集長・おかざき)


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